ポプテピピックはなぜネットユーザーの注目を集めるのか
冬アニメはなかなか話題の作品が多い印象がありますが、その中でも特に多くの視聴者の注目を集めているのは「ポプテピピック」ですね。
私はもともとぶくぶ先生のファンで、ポプテピピックも「本当にこのマンガクソマンガだな…損した気分になる…」という気持ちで単行本を読んでいました。なのでアニメ化すると聞いた時はどうせクソアニメになるだろうとハードルを低く構えていました。しかし、実際にアニメが始まってみると予想の斜め上どころか真上をいくとんでもないクソアニメで、私だけではなく多くのネットユーザーがその内容に驚愕し、今期のアニメでは最も大きい盛り上がりを見せています。みんなダリフラとかも注目して…
そこで、なぜここまで多くの人の注目を集めるのかを考えなからクソアニメを視聴すると、多くの作品内の工夫が見えてきました。今回は、その作品内の工夫について考えていきたいと思います。
① 地域差を消し、全国の人々が同時に実況できるようにした
ポプテピピックはTV放送とAbemaTVでの配信とニコニコ生放送での配信が全て同じ時間に放送されるようになっています。このアニメは原作のクソさを100%受け継いだ正当なクソアニメなので、一人で見ると「なんや…なんやこれは…」という状態に陥ってしまいますが、多くの人と情報を共有する、つまり実況することでパロディの元ネタが分かったり、一緒に「なんや…何の目的で作ったんやこれは…」という気持ちになることができます。
また、全て同じ時間に放送されるためTwitterでの実況によるツイートが全て重なり、ほぼ確実に放送の時間帯にはポプテピピックのタグはトレンドの最上位に上がることができます。Twitterのトレンドはまさに今どれだけのネットユーザーがそれに注目しているかの指標です。ポプテピピックは全て同じ時間に放送することで意図的に「みんなが同じアニメを見て盛り上がっている雰囲気」を作り出しているのです。
② 魚とり網カゴのようなアニメの作り方
ポプテピピックは、本来10月の秋クールに放送される予定でしたが、キングレコードに梯子を外された結果、今期に放送することになったという経緯があります。それが結果的に、HPの変化や冬コミ期間にクソカーで宣伝を行うなど、長い期間をかけて視聴者の注目を集めることができ、1話の視聴者数を格段に増やしたといえます。
また、15分区切りで二回同じ内容を放映し、毎回テーマ性を持った声優コンビに変えるシステムも、「次回はどんな声優コンビが登場するのだろう」「次は自分の推し声優が来るのではないか」「杉田と中村はまだか」など、次回への大きな期待を生ませ、継続的な視聴を促すようになっています。現在では、Twitterをしているベテラン声優さんのツイート内容から、次にクソアニメの被害者になるのは誰になるのか予想するのが流行しており、これによってクソアニメ視聴がその答え合わせになり、継続視聴のの意欲を保ち続けられるようになっています。それ以外にも、ミニコーナーのAC部の起用によって、本来のポプテピピックの内容とは異なった異質な作品を見せられることで、飽きのないアニメになっています。
このように、「入るのは簡単だが、なかなか出られないようになっている」のがポプテピピックの特徴と言えます。まるで魚とり網カゴです。一度入ってしまえば私たちはあのクソアニメから逃げることはできません。キングレコードに食べられるのを待つのみです。
③ ネット配信への配慮
お気付きになった人もいるでしょうが、この作品はネットでの配信への配慮がされた作品です。一体どのような点が配慮されているかというと
このように、サムネが統一されているのです。サムネが統一されていると、ちゃんとしたアニメだなあって気持ちになれますね。実際はクソアニメです。
しかもこのサムネ、Aパートの最初に流れる内容と連動しているので「ああ◯話はあの話か」と見たかった話を楽に見返すことが可能なのです。
そして、ニコニコでは放送直後、アマゾンプライムに至っては放送の30分前に最新話が配信されるため、TVでの放映を見た直後にまた同じ話を見返すことも可能どころか、アマゾンプライムで最新話を見て声優が誰かを確認してからTVでの放映を見ることも可能なのです。結果的に、この配信の速さが功を奏し、ニコニコでは毎話100万回再生を突破しており、ニコニコのアニメカテゴリは現在ポプテピピックが支配していると言っても過言ではありません。
地上波ネット同時放送していることで逆に疎かになってもおかしくないネット配信に関しても、練りに練って考え抜かれた体制で話題性を作ることに執心しており、それが功を奏しています。これには脱帽です。
④ 一流のモノづくり集団を集めた”最高峰のクソ”
このポプテピピックという作品、内容のクソさがピックアップされていますが、実は一流のモノづくり集団を集めた最高峰のクソです。
スペースネコカンパニーは、天才てれびくんなど、多くの作品に携わっている一流のクリエイター集団です。
また、神風動画は ジョジョのOPや、今期の刀剣乱舞花丸のEDやアイドリッシュセブンのOPの制作に携わり、今後はニンジャバットマンの劇場公開も控える、こちらもまた一流のアニメ製作会社です。
AC部も、ビットワールドや、ORANGE RANGEの「SUSHI食べたい feat. ソイソース」などの制作に携わる、異色のクリエイター集団です。
ゲームパートを担当する山下諒さんは、第22回学生CGコンテストで評価賞を受賞しており、現在大学四年生でありながら目覚ましい活躍を見せている新進気鋭のクリエイターです。
また、毎回声優が変わることで多くのベテラン声優の方々がポプ子とピピ美の声を担当しており、2話でポプ子の声を担当した古川登志夫さんは、ポプテピピックの手法についてこのように語っています。
声優個々の演技論の違いが明確に分かるポプ子とピピ美の複数キャスティング。ある意味、俳優教育、声優教育に一石を投じるコンテンツにも思える。基礎訓練(土台)は同じでもその上に建てる演技論(家)は多様。極論にせよ「演技論はプロの表現者の数だけ有る」は成り立つ、と。
— 古川登志夫(声優) (@TOSHIO_FURUKAWA) 2018年1月22日
昔から「同一の教材、訓練法では画一化された俳優を生む」懸念、否、俳優教育の可不可自体が論じられた。千田是也さんは「教える、という言い方自体が随分問題であって、教員の仕事は、持って生まれた良いものを引き出してあげるに留まる」との趣旨の発言をされたと教わった記憶がある。
— 古川登志夫(声優) (@TOSHIO_FURUKAWA) 2018年1月22日
そうしたら観点からすると、業界人ならずとも、以下の二作品が興味深く感じられるのでは。クソ」とは「やべえ」と同じ褒め言葉か。。。#ポプテピピック #声だけ天使
— 古川登志夫(声優) (@TOSHIO_FURUKAWA) 2018年1月22日
ベテラン声優の古川さんに声優の演技論について語らせるとは、このポプテピピックという作品には本当に驚かされます。実際、4話の神谷明さんや、3話の若本規夫さんなど、人によって全く違った個性を見ることができ、まさにポプテピピックは声優のプレゼンテーション大会のようになっています。
一流のクリエイターや声優が集まり、各自が自由に作品を作っているのがポプテピピックです。この素晴らしい作品を一言で表現するならば、まさに「クソ」と言えるのではないでしょうか。
⑤ 実は普通に面白い
ここまで何度もポプテピピックの手法について説明しましたが、ここからは、私のポプテピピックここすきポイントを説明したいと思います。
↑ここすき
↑これすき
↑ザ・エンドってねすき
↑ナナチすき
↑ベガすき
↑フランスパートすき
↑島中作家すき
↑板金王すき
↑クオリティの高いフェルトによるライブパートすき
あっこれダメだ。全部すき。いっぱいちゅき♡
普通に中身も面白いです。はい。
結論
ポプテピピックは、どこまでも計算され尽くした序盤中盤終盤隙のないクソアニメです。また、Twitterの拡散力を活用した話題性作りや視聴者の獲得など、インターネットが完全に普及した現代だからこそできるパロディアニメとしての動き方を行っているマーケティングの鬼であるとも言えます。過去にも人気の出たパロディアニメは数ありましたが、ここまで多くの視聴者を巻き込んだアニメは類を見ないと思います。これからも今期のアニメの話題の中心になっていくであろうポプテピピックには目を離せません。みんなで一緒にクソアニメにどっぷり浸かっていきましょう。
また、第一巻のBlu-rayとDVDはついこないだ発売したばかりですのでみんなで買いましょう。買え。